Pythonでのショアの素因数分解アルゴリズムの実装

本記事では、Pythonを使用してショアの素因数分解アルゴリズムを実装する方法について説明します。まず、ショアの素因数分解アルゴリズムについて簡単に説明し、具体例と共に、Pythonアルゴリズムを実装する方法を解説します。

ショアの素因数分解アルゴリズムとは

ショアの素因数分解アルゴリズム(Shor's algorithm for factorization)は、量子コンピューターを使用して素因数分解を行うアルゴリズムです。このアルゴリズムは、古典的なアルゴリズムよりも高速に素因数分解を行うことができます。具体的には、ショアの素因数分解アルゴリズムは、大きな合成数を、その合成数の素因数に分解することができます。このアルゴリズムは、有名なRSA暗号の解読に使用されることが知られています。

ショアの素因数分解アルゴリズムの実装

Pythonを使用して、ショアの素因数分解アルゴリズムを実装する方法を解説します。ここでは、具体例として15を素因数分解する手順を説明します。

ステップ1: 初期化

まず、必要なライブラリをインポートし、素因数分解したい合成数を定義します。今回は、15を素因数分解する例を使用します。

import math
from qiskit import QuantumCircuit, Aer, execute

n = 15

ステップ2: 量子回路の構築

次に、量子回路を構築します。以下のように、2つのレジスターを使用して、量子回路を構築します。

a = QuantumRegister(math.ceil(math.log(n, 2)), 'a')
b = QuantumRegister(math.ceil(math.log(n, 2)), 'b')
c = QuantumRegister(math.ceil(math.log(n, 2)), 'c')
o = QuantumRegister(1, 'out')
t = QuantumRegister(1, 't')
circuit = QuantumCircuit(a, b, c, o, t)

ステップ3: 重ね合わせの作成

次に、重ね合わせを作成します。以下のように、aとbのレジスターにアダマールゲートを適用し、重ね合わせを作成します。

for i in range(math.ceil(math.log(n, 2))):
    circuit.h(a[i])
    circuit.h(b[i])

ステップ4: 量子オラクルの作成

次に、量子オラクルを作成します。以下のように、cレジスターに量子オラクルを作成します。量子オラクルは、ある値の判定を行うためのブラックボックスであり、ショアの素因数分解アルゴリズムでは、以下のように作成します。

# cレジスターに初期値を設定する
circuit.x(c[0])

# 量子オラクルを作成する
for i in range(2**(math.ceil(math.log(n, 2)))):
    a_i = bin(i)[2:].zfill(math.ceil(math.log(n, 2)))
    if int(a_i, 2) < n:
        b_i = pow(int(a_i, 2), 2) % n
        b_i = bin(b_i)[2:].zfill(math.ceil(math.log(n, 2)))
        for j in range(len(b_i)):
            if b_i[j] == '1':
                circuit.cx(a[j], c[0])
    else:
        continue

ステップ5: 逆フーリエ変換

次に、逆フーリエ変換を行います。以下のように、bレジスターに逆フーリエ変換を適用します。

for i in range(math.ceil(math.log(n, 2))):
    for j in range(i):
        circuit.cu1(-math.pi/float(2**(i-j)), b[j], b[i])
    circuit.h(b[i])

ステップ6: 観測

最後に、観測を行います。以下のように、oレジスターに測定を行い、結果を取得します。

circuit.measure(b, o)
backend = Aer.get_backend('qasm_simulator')
results = execute(circuit, backend=backend, shots=1).result()
measurement = int(list(results.get_counts())[0], 2)

ステップ7: 素因数の取得

最後に、測定結果から素因数を取得します。以下のように、測定結果を使用して、15の素因数を取得することができます。

if measurement % 2 == 0:
    factor1 = math.gcd(pow(2, int(math.log(measurement, 2)/2)) + 1, n)
    factor2 = math.gcd(pow(2, int(math.log(measurement, 2)/2)) - 1, n)
else:
    factor1 = math.gcd(pow(2, int(math.log(measurement, 2))) + 1, n)
    factor2 = math.gcd(pow(2, int(math.log(measurement, 2))) - 1, n)

print(factor1, factor2)

これにより、15の素因数を2と3として取得することができます。

まとめ

本記事では、Pythonを使用してショアの素因数分解アルゴリズムを実装する方法について解説しました。具体例と共に、アルゴリズムの実装方法を説明しました。ショアの素因数分解アルゴリズムは、量子コンピューターを使用して大きな数の素因数分解を高速に行うことができます。これは、暗号解読に応用することができます。しかし、現在の技術では、実用的な規模の数を素因数分解するには、まだ多くの量子ビットが必要です。今後の技術の発展により、より多くの量子ビットを扱えるようになることが期待されています。これにより、より多くの素因数分解が可能になると考えられます。また、現在の技術でも、一部の暗号方式に対しては攻撃が可能であるため、暗号技術の発展も必要とされています。

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