Pythonの並列処理におけるマルチスレッドとマルチプロセスの違いと使い分け方

Pythonは、マルチスレッドとマルチプロセスの両方をサポートしています。これらの機能は、並列処理を実現するために使用されます。両者には違いがあるため、それらを正しく使用するためには、それらの違いを理解する必要があります。本記事では、Pythonにおけるマルチスレッドとマルチプロセスについて説明します。

マルチスレッドとは何か

マルチスレッドは、同じプロセス内で複数のスレッドを使用して、同時に複数のタスクを処理する方法です。各スレッドは、同じメモリ空間を共有し、同じ変数にアクセスできます。これにより、スレッド間のデータ共有が容易になります。ただし、スレッド間での排他制御が必要であるため、コードを実装する際には注意が必要です。

マルチプロセスとは何か

マルチプロセスは、複数のプロセスを使用して、同時に複数のタスクを処理する方法です。各プロセスは、独自のメモリ空間を持ち、互いに影響を受けません。このため、データ共有にはIPC(Inter-Process Communication)を使用する必要があります。

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マルチスレッドとマルチプロセスの違い

マルチスレッドとマルチプロセスの違いは、メモリ管理方法にあります。マルチスレッドは、同じメモリ空間を共有するため、データ共有が容易であり、スレッド間でのコミュニケーションが容易です。一方、マルチプロセスは、独自のメモリ空間を持つため、IPCを使用してデータ共有をする必要があります。これにより、データの複製が必要となり、コミュニケーションによるオーバーヘッドが発生する可能性があります。

マルチスレッドとマルチプロセスの利用する際の注意点

マルチスレッドとマルチプロセスを使用する際には、以下の注意点を守る必要があります。

  1. スレッドやプロセスが共有するデータを適切に排他制御する必要があります。これにより、データ競合が発生することを防ぎます。
  2. マルチスレッドを使用する場合、Pythonのグローバルインタプリタロック(GIL)に注意する必要があります。GILは、同時に複数のスレッドがPythonコードを実行することを防ぐために存在します。GILの影響を受けることが多いのは、CPUバウンドなタスクであり、I/Oバウンドなタスクでは影響が小さいことが多いです。
  3. マルチプロセスを使用する場合、プロセス間通信(IPC)を使用する必要があるため、データの複製が発生します。このため、大量のデータを扱う場合は、マルチプロセスの方が遅くなることがあります。
  4. マルチスレッドとマルチプロセスは、それぞれのメリットとデメリットがあります。選択する方法は、実行するタスクに依存します。例えば、CPUバウンドなタスクを実行する場合は、マルチプロセスを選択することが適しています。一方、I/Oバウンドなタスクを実行する場合は、マルチスレッドが適しています。

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コードの実例

以下は、マルチスレッドとマルチプロセスを使用した簡単なコード例です。

マルチスレッドの例

import threading

def worker(num):
    """スレッドで実行される処理"""
    print(f"Worker {num} started")
    # ここにスレッドで実行する処理を記述する
    print(f"Worker {num} finished")

threads = []
for i in range(5):
    t = threading.Thread(target=worker, args=(i,))
    threads.append(t)
    t.start()

for t in threads:
    t.join()

上記のコードは、5つのスレッドを作成し、それぞれのスレッドでworker関数を実行しています。

マルチプロセスの例

from multiprocessing import Process

def worker(num):
    """プロセスで実行される処理"""
    print(f"Worker {num} started")
    # ここにプロセスで実行する処理を記述する
    print(f"Worker {num} finished")

processes = []
for i in range(5):
    p = Process(target=worker, args=(i,))
    processes.append(p)
    p.start()

for p in processes:
    p.join()

上記のコードは、5つのプロセスを作成し、それぞれのプロセスでworker関数を実行しています。

まとめ

Pythonでは、マルチスレッドとマルチプロセスの両方を使用して、並列処理を実行することができます。マルチスレッドとマルチプロセスの違いを理解して、それぞれの利点と注意点を把握することが重要です。また、GILやIPCなどの概念についても理解する必要があります。

マルチスレッドを使用する場合は、GILによる制限やデッドロック、競合状態に注意し、適切なロックを使用することが必要です。一方、マルチプロセスを使用する場合は、IPCによるデータの複製やプロセス間通信のオーバーヘッドに注意する必要があります。

最適な並列処理の方法は、実行するタスクによって異なります。CPUバウンドなタスクを実行する場合は、マルチプロセスを選択することが適しています。一方、I/Oバウンドなタスクを実行する場合は、マルチスレッドが適しています。これらのプログラムはPythonの基本的な文法とライブラリで実装することができます。Pythonの基礎学習には下記のようなサイトの利用が有効です。

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